「Excelでの情報管理が煩雑になっている」「複数の部門で情報がバラバラに管理されている」――こうした課題を抱える企業から注目を集めているのが、サイボウズが提供する「kintone」です。kintoneはノーコードで業務アプリを作成できるツールとして知られていますが、実は強力な“データベース”としても活用可能です。
本記事では、非エンジニアの方にもわかりやすく、kintoneのデータベース機能の特徴や作成方法、設計のポイントについて詳しく解説します。データの一元管理や社内での効率的な共有を実現したい方は、ぜひご覧ください。
kintoneは一見すると業務アプリ作成ツールのように見えますが、その本質は「データベースプラットフォーム」にあります。kintoneにおける「アプリ」とは、単なる画面表示ではなく、データを格納し、閲覧・編集・集計・他システムとの連携が可能な「データベースの器」として機能します。
一般的には、「アプリ」は機能を持ったフォーム、「データベース」は情報の蓄積場所と考えられがちですが、kintoneではこの二つが一体化しています。たとえば、顧客管理アプリを作成すれば、顧客名・住所・電話番号などの情報を保存し、検索や一覧表示、さらにはCSV形式での出力も可能です。これはまさに、データベースとしての役割を果たしていると言えます。
したがって、「kintoneでアプリを作る」ということは、そのまま「社内データベースを構築する」ことに他なりません。
1. ノーコードで設計・変更が可能
専門的なデータベースの知識がなくても、ドラッグ&ドロップの操作で簡単にフィールドを追加したり、自由に構造を変更したりすることができます。そのため、IT担当者でなくても、現場の担当者が業務内容に合わせて項目の設計を行うことが可能です。
2. 即時運用が可能なスピード感
通常、データベースをゼロから構築する場合は、設計、開発、テスト、リリースといった長い工程が必要となります。しかし、kintoneではフォームを作成した後すぐに運用を開始できるため、スピーディーに導入が可能です。
3. 検索・集計・グラフ化が容易
蓄積されたデータは、条件検索やフィルター、集計、さらにはグラフ表示まで、ワンクリックで簡単に操作できます。リアルタイムで分析や可視化ができるため、迅速な業務判断に役立ちます。
4. ユーザー権限とログ管理で安心
データベースにおいて重要なアクセス管理についても、ユーザーごとに閲覧や編集の権限を細かく設定することが可能です。また、編集履歴を保存する機能も備えており、万が一の際には修正内容の確認や復元にも対応できます。
5. 他アプリとの関連付け(リレーショナル設計)
複数のアプリ間で、「顧客マスタ」と「対応履歴」などの関連性を持たせることが可能です。これにより、単一のデータベースでは難しい、構造化された情報管理を実現することができます。
多くの中小企業では、これまでExcelや紙で分散して管理されていた情報を、kintoneのアプリに置き換えることで、実質的に社内データベースを整備したのと同様の効果を得ています。
それでは、実際にkintoneでデータベースを作成する流れについてご紹介いたします。ここでは、非エンジニアの業務担当者の方でも扱いやすいよう、シンプルな手順に分けて丁寧に解説いたします。
kintoneのトップ画面から「+アプリを作成する」ボタンをクリックします。テンプレートから選択することも可能ですが、「はじめから作成」を選ぶことで、データベースの構造を自由に設計することができます。
ここで、管理したい情報の項目(フィールド)を設定します。たとえば「取引先管理アプリ」であれば、
・取引先名(文字列)
・電話番号(電話番号)
・メールアドレス(Eメール)
・担当者(ユーザー選択)
・登録日(日付)
といった形で、データベースに必要なカラムを直感的に作成できます。
次に、データの表示方法を設定します。例えば、「五十音順一覧」や「担当者別一覧」など、条件を指定して自動的に表示させることが可能です。これにより、業務の状況に応じて使いやすいインターフェースを作ることができます。
情報漏洩や誤操作を防止するために、ユーザーごとに閲覧・編集・削除の権限を細かく設定します。例えば、管理部門のみが編集できるように制限したり、営業部門には閲覧のみを許可するといった柔軟な権限管理が可能です。
運用開始後も、フィールドの追加や削除、条件検索の調整などをリアルタイムで行うことが可能です。kintoneの大きな魅力は、「運用しながら柔軟に改善できる」点にあります。この特長により、データベース運用の敷居が大幅に低くなります。
データベースにおいては、「構造設計」が非常に重要です。自由に作成できる反面、設計が曖昧だと、後から使いにくくなったり、正確な情報が蓄積されない場合もあります。以下のポイントをしっかり押さえて進めましょう。
「取引先名を毎回手入力する」「同じ顧客情報が複数のアプリに存在する」といった状況は、データの重複や整合性の問題を引き起こす原因となります。kintoneでは、「関連レコード一覧」や「ルックアップ」機能を活用して情報を一元化することが望ましい方法です。
すべてを「文字列」フィールドで管理しようとせず、用途に応じて日付や数値、選択リストなど、適切なフィールドタイプを選択することが重要です。これにより、検索や集計の精度が向上します。
単に情報を蓄積するだけでなく、「どの部門が・いつ・何を行うか」といった業務フローを反映した構造にすることで、社内全体で使いやすいアプリを作ることができます。必要に応じて、「ステータス管理」や「コメント機能」も積極的に活用しましょう。
誤操作を防止するためには、操作権限の適切な設定とログ管理が非常に重要です。特に社内で複数の部門が利用する場合は、「誰が・いつ・何を行ったか」が明確に把握できる状態を維持することが、システムの信頼性向上につながります。
kintoneは単なる業務アプリ作成ツールにとどまらず、非エンジニアの方でも扱いやすい「社内データベース」として非常に強力な機能を備えています。フォーム設計がそのままテーブル設計となるシンプルな構造により、どなたでも簡単にデータベースの構築および運用が可能です。
業務改善や情報の一元管理を目指す際には、まず自社のExcelや紙での運用状況を見直し、kintoneによるデータベース化をご検討いただくことをおすすめします。さらに次のステップとして、テンプレートの活用や他部門との連携を視野に入れることで、全社的な業務効率化が一層加速するでしょう。
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