コラムCOLUMN

顧客管理におけるよくある課題とは?顧客管理の課題解決におけるkintoneの活用方法を解説

はじめに

「担当者に電話しないと、あの顧客の状況が全く分からない」「Excelの顧客リストが重すぎて、検索するだけで数分かかる」。このような課題は、多くの企業で共通して聞かれる悲鳴です。あなたの会社の顧客情報は、企業の成長を支える最も貴重な「資産」として、適切に管理・活用できているでしょうか?

顧客管理の不備を放置することは、知らず知らずのうちに顧客満足度を低下させ、貴重な営業機会の損失に直結し、企業の成長を妨げる大きなリスクとなります。

この記事では、高価な専門ツールを導入しなくても、業務改善プラットフォーム「kintone」を使って、低コストかつ柔軟に自社にぴったりの顧客管理システムを構築し、多くの企業を悩ませる「属人化」という根深い課題を解決して売上向上に繋げる具体的な方法を、導入ステップから成功のコツまで徹底解説します。

なぜ?多くの企業が顧客管理でつまずく「5つの共通課題」

多くの企業が顧客管理の重要性を認識しつつも、なかなかうまくいかないのはなぜでしょうか。その根本には、多くの企業に共通する5つの根深い課題が存在します。

課題1:情報の属人化

最も深刻な課題が、情報が「人」に紐づいてしまう「属人化」です。「あの顧客のキーマンは〇〇さんしか知らない」「過去のトラブル経緯はAさんの頭の中にしかない」「口頭で伝えた約束事が記録に残っていない」という状態では、担当者の急な不在や異動、退職によって、これまで築き上げてきた顧客との関係性や貴重なノウハウが一瞬にして失われてしまいます。後任者が状況を把握できず、お客様に同じ質問を繰り返して不信感を抱かれたり、最悪の場合、重要な取引が失われたりする。これは、単なる機会損失ではなく、会社の信用問題にも発展しかねない重大な経営リスクです。

課題2:情報の散在

顧客情報が、営業担当者それぞれのPCに保存されたExcelファイル、個人のメール受信箱、名刺管理ソフト、デスクに積まれた名刺の山、手帳のメモ、さらにはビジネスチャットのログなど、社内の至る所に散らばっている状態です。これでは、ある顧客に関する情報を網羅的に把握するために複数の場所を「宝探し」のように探し回る必要があり、膨大な時間が浪費されます。その結果、「前回と同じ提案をしてしまった」「他部署でのトラブルを知らずに訪問してしまい、お客様を怒らせてしまった」といった、本来防げるはずのミスが発生しやすくなります。

課題3:情報共有のタイムラグ

営業担当者が顧客から得た「近々、新しい事業所を立ち上げるらしい」「今のサービスに少し不満があるようだ」といった重要な最新情報が、リアルタイムで社内に共有されない問題です。例えば、サポート部門が顧客からのクレームに対応している裏で、営業担当者が新製品の案内をしてしまう、といった最悪のケースも起こり得ます。情報の鮮度は、ビジネスのスピードに直結します。共有の遅れは、顧客の不信感を招くだけでなく、競合他社に先を越されるなど、絶好の提案機会を逃す致命的な原因となります。

課題4:データの陳腐化と品質低下

情報の更新が面倒で、担当者名や役職、連絡先などが古い情報のまま放置されてしまう問題です。特に、人事異動の多い年度末などは、データの陳腐化が加速します。Excelファイルの場合、正しい最新のファイルがどれか分からず、更新をためらってしまうこともあります。陳腐化したデータに基づくアプローチは、顧客に「自社のことを大切に思ってくれていない」という印象を与え、失礼にあたるだけでなく、DMの不達による無駄なコストを発生させ、なにより企業のブランドイメージと信頼性を損ないます。

課題5:データの分析・活用ができない

せっかく顧客情報を集めても、それがただの「記録」で終わってしまっているケースも少なくありません。Excelに蓄積されたデータは、分析に適した形式になっていないことが多く、「どの業界の顧客が最も利益率が高いのか」「リピート購入してくれる優良顧客の共通点は何か」「失注した案件に共通する原因は何か」といった戦略的な分析ができず、結局は勘と経験に頼った営業活動から抜け出せないのです。これでは、データを次のアクションに繋げ、売上を最大化することはできません。

Excelでの顧客管理はもう限界!kintoneが最適な解決策である理由

手軽さから多くの企業が最初に試みるExcelでの顧客管理ですが、すぐに限界に直面します。kintoneが、その限界を超える最適な解決策である理由を、Excel管理の課題と対比させながら具体的に見ていきましょう。

Excel管理の限界点

同時編集の難しさと情報の分断: 誰かが共有サーバー上のExcelファイルを開いていると、「読み取り専用」で開くしかなく、リアルタイムでの更新ができません。「後で更新しよう」と思っているうちに忘れてしまい、結局、自分のPCに「顧客リスト_20250728.xlsx」といった名前でコピーを作成。これが情報の分断と、どれが最新版か分からない混乱を生む元凶です。

属人化の温床となる自由すぎるフォーマット: 各自が独自の判断で列を追加したり、入力ルールを無視したりするため、同じ顧客リストのはずが人によって全く違うフォーマットになってしまいます。これでは、正確な集計や分析は不可能です。

検索性の低さとパフォーマンスの悪化: データが数千行を超えると、ファイルを開くだけで数分待たされたり、フィルタをかけただけでフリーズしたりと、業務効率は著しく低下します。複雑なVLOOKUP関数やマクロが組まれたファイルは、もはや作成者以外は誰も触れない「ブラックボックス」と化し、メンテナンスも困難になります。

脆弱なセキュリティ: ファイルのコピーやメール添付、USBメモリでの持ち出しが容易なため、悪意の有無にかかわらず、常に情報漏洩のリスクと隣り合わせです。アクセスログも追えないため、いつ誰が情報を持ち出したのかを特定することも困難です。

kintoneが提供する解決策

リアルタイムな情報共有と一元化: クラウド上で情報を一元管理するため、関係者全員がいつでもどこでも、PCやスマートフォンから最新の顧客情報にアクセスし、同時に編集も可能です。「あのファイル、誰か開いてる?」といった確認は一切不要になり、情報の更新漏れやバージョン違いによる混乱から解放されます。

データ品質の担保と入力負荷の軽減: 入力項目を必須にしたり、ドロップダウンリストから選択させたり、文字数や数値の範囲を制限したりすることで、表記ゆれ(例:「株式会社」と「(株)」)や入力漏れを防ぎ、常に高品質なデータを維持できます。また、関連する情報を自動で引っ張ってくる「ルックアップ機能」を使えば、入力の手間も大幅に削減できます。

柔軟かつ強固なアクセス権設定: 「営業担当者は自分の担当顧客のみ編集可能、他は閲覧のみ」「マネージャーは全データを閲覧・編集可能」「アルバイトは個人情報を除く一部の項目のみ閲覧可能」といった、役職や部署、個人単位でのきめ細やかなアクセス権限設定が可能です。これにより、セキュリティを担保しながら、必要な人に必要な情報だけを安全に共有できます。

高度な検索機能と無限の拡張性: 全文検索はもちろん、「A業界で、Bエリアにあり、かつ最終接触から3ヶ月以上経過している顧客」といった複数の条件を組み合わせた高度な絞り込みも瞬時に行えます。さらに、API連携や豊富なプラグインを活用することで、会計システムやMAツールなど、他のシステムと繋ぎ、活用の幅を無限に広げることが可能です。

kintoneで「使える顧客管理」を構築する3ステップとアプリ連携術

では、実際にkintoneで「本当に使える顧客管理」を構築するにはどうすればよいのでしょうか。ここでは、その具体的な手順と、活用の幅を広げるコツを、より詳しく解説します。

ステップ1:目的と管理項目の明確化(スモールスタートが鍵)

成功への最も重要なステップは、「何のために顧客管理を行い、どうなりたいのか」という目的を、関係者全員で共有することです。最初から完璧なシステムを目指す必要はありません。まずは、「社内に散在する顧客の連絡先を一元化し、誰でも30秒以内に見つけられるようにする」「担当者不在時の問い合わせ対応で、お客様を待たせる時間をなくす」といった、具体的でシンプルなゴールを設定しましょう。

その目的を達成するために、本当に必要な最低限の管理項目は何かを、営業、マーケティング、サポートなど、実際に顧客と接するメンバーで話し合って決めます。この時、既存のExcelの項目をただ写すのではなく、「この項目は、本当に誰かが見ているのか?」「何のアクションに繋がるのか?」と問い直すことが重要です。

ステップ2:基本となる「顧客管理アプリ」の作成

目的と項目が決まったら、実際にkintoneでアプリを作成します。プログラミングは不要で、PowerPointのスライドにパーツを配置するように、ドラッグ&ドロップの簡単な操作で、以下のような項目を持つ顧客管理のデータベースが完成します。

• 顧客情報(基本):
◦ 会社名(文字列一行フィールド)
◦ 担当者名(文字列一行フィールド)
◦ 部署・役職(文字列一行フィールド)
◦ 電話番号・メールアドレス(文字列一行フィールド)

• 対応履歴(顧客とのやり取りを記録する):
◦ ここは、複数行の情報をまとめて入力できる「テーブル」という機能を使います。
◦ テーブル内に、「対応日(日付フィールド)」「対応者(ユーザー選択フィールド)」「対応内容(文字列複数行フィールド)」といった項目を配置すれば、その顧客とのやり取りの歴史が一つの画面で時系列に表示され、一目瞭然になります。

• 顧客ランク/ステータス(顧客の状態を管理する):
◦ 「Aランク」「Bランク」といった顧客の重要度や、「見込み」「既存」「休眠」といった関係性のステータスを、「ドロップダウン」や「ラジオボタン」で設定します。自由入力ではなく選択式にすることで、後から「Aランクの顧客だけを一覧表示する」といったデータ集計や分析が容易になります。

ステップ3:関連アプリとの連携で「攻めの顧客管理」へ

顧客管理アプリを情報のハブ(中心)として、他の業務アプリと連携させることで、その価値は飛躍的に高まります。これにより、単なる「顧客台帳」から、営業活動を加速させる「武器」へと進化します。

案件管理アプリとの連携: 顧客管理アプリの画面に、「この顧客の案件を登録する」というボタンを設置します。これをクリックすると、案件管理アプリが起動し、顧客情報が自動で引き継がれた状態で新しい案件を登録できます。これにより、同じ顧客情報を何度も入力する手間が省け、顧客に紐づく全ての商談(受注・失注含む)を一覧で可視化できます。

活動日報アプリとの連携: 営業担当者が日報を書く際に、訪問した顧客名を顧客管理アプリから選択できるようにします。これにより、日々の活動報告が自動的に顧客情報に蓄積されていきます。担当者が変わっても、過去の訪問履歴やヒアリング内容をすぐに把握でき、スムーズな引き継ぎが実現します。

「ルックアップ機能」の活用: これらの連携を支えるのが「ルックアップ機能」です。例えば、案件管理アプリで顧客名(例:「システムクレイス」)を選択するだけで、顧客管理アプリに登録されている住所、電話番号、担当者名といった関連情報がボタン一つで自動入力されます。これにより、入力の手間を大幅に削減できるだけでなく、「株式会社」と「(株)」のような表記ゆれによるデータの不整合を完全に防ぎ、データベースの品質を劇的に向上させます。

まとめ

顧客管理は、単に情報を整理整頓し、紛失を防ぐだけの「守り」の業務ではありません。それは、顧客一人ひとりとの関係性のストーリーを深く理解し、そのデータに基づいて未来のビジネスチャンスを能動的に生み出すための「攻め」の経営資産です。顧客の過去の購買履歴から次のニーズを予測し、先回りした提案を行う。成功事例のパターンを分析し、他の顧客へ横展開する。こうした「攻め」の活用ができて初めて、顧客情報は企業の成長をドライブする強力なエンジンとなります。

システムクレイスでは、お客様の顧客情報を単なるリストから、利益を生み出す『経営資産』へと変えるお手伝いをします。豊富な実績とノウハウで、お客様のビジネスに最適な顧客管理の仕組みを共に構築します。ぜひシステムクレイスまでお問い合わせください。

お問い合わせ

kintoneアプリの開発・カスタマイズに関するご相談・ご質問などお気軽にお問い合わせください