業務アプリを手軽に作ることができるkintoneを、社内に導入されていることも多いのではないでしょうか。そのkintoneではさまざまな業務を進められますが、在庫管理も可能であるのをご存知でしょうか。
今回は、kintoneの特徴から、在庫管理に活用するのに好適な理由とともに、kintoneで在庫管理システムを構築する方法、構築のメリットをご紹介します。ぜひお役立てください。
kintoneとは、サイボウズ株式会社が提供する、プログラミングなしで、誰もが手軽に業務アプリを開発できるクラウド型のプラットフォームです。
業務内容に適した基幹システムや業務システムを手軽に開発することができる点と、複数のメンバー同士のコミュニケーションがスムーズに行えるSNS機能を有する点が特徴です。
kintoneでは、在庫管理やタイムカードによる勤怠管理、申請業務管理など、汎用的な業務を行えるアプリのテンプレートがそろっており、そのサンプルアプリを用いれば、手軽に開発して利用を開始できます。
またプラグインやAPI連携などを通じて外部機能やサービスを用いて利用することで、さらにカバーする業務の範囲が広がります。
テンプレートアプリで即座に運用を始められる手軽さに加え、プラグインや API を使ったカスタマイズの自由度、そしてクラウドサービスならではのモバイルアクセスなど、kintoneの特長は、そのまま在庫管理のシーンでも大きな力を発揮します。
では具体的に、どのようなポイントが在庫管理において優位性を生み出すのでしょうか。次の章で詳しく解説していきます。
【関連リンク】kintone(キントーン)とは?特徴やメリットを解説!
【関連リンク】kintoneでできることとは?機能や特徴を紹介
・在庫管理機能を手軽に実装できる
先述の通り、kintoneにはサンプルアプリとして、在庫管理のテンプレートが存在します。「製品在庫管理パック」というサンプルアプリでは、製品の在庫数を効率的に管理することができる機能が備わっています。
在庫数は、集計表やグラフでわかりやすく、可視化されて表示されるので、発注漏れの防止や在庫数のリアルタイムな把握といったことが可能になります。
また、製品マスタなどと一つ一つの製品のデータを紐付けられることで、より在庫管理が効率化するといった一面があります。
・クラウドサービスのため外部からモバイルでも確認が可能
kintoneはクラウドサービスであるため、モバイル対応しています。外部からモバイル機器を利用して在庫状況を確認することも可能です。モバイルでも確認が可能ということから、業務の効率化を実現します。
・自動化と管理性向上を実現
従来のアナログによる手書き記録やエクセルでの在庫管理と比べて、在庫管理の自動化と管理性向上を実現します。これまでの業務効率と比較して、大幅に改善すると考えられます。
・外部システムとのシームレス連携で“在庫データの一元化”を実現
kintoneは”REST API”や”Webhook”を標準装備しているため、ERP、ECサイト、WMS(倉庫管理システム)など、既存の在庫管理システムともリアルタイムでデータを同期できます。散在しがちな在庫情報を一元化することで「二重入力の削減」「最新在庫数の自動更新」「販売・調達部門とのデータ連携」などが一気に加速。在庫差異や入力ミスを最小化し、属人化していた在庫管理フローを標準化できます。
・多拠点、多部門の“在庫可視化”をワンプラットフォームで
複数倉庫や店舗、サプライヤー在庫を扱う企業にとって、拠点ごとの在庫状況をリアルタイムで比較できることは大きな武器です。kintone なら、拠点別・ロケーション別の在庫残高をダッシュボードで瞬時に表示。フィルターや集計機能で「拠点間移動の最適化」「過剰在庫・欠品の早期発見」が可能になり、サプライチェーン全体のリードタイム短縮にも貢献します。
【関連リンク】kintone(キントーン)とは?特徴やメリットを解説!
kintoneで在庫管理システムを構築する方法をご紹介します。
前提として、kintoneで在庫管理システムを構築するには、複数のアプリを構築し、それらを連携させることになります。在庫管理システムには、どのようなアプリが必要になるのか、また各アプリの必須となるフィールドと拡張ポイントを解説します。
商品の在庫に関する情報、商品マスタをまとめて登録するアプリです。このアプリには商品名や商品分類、商品番号、商品単価、仕入単価などの項目が登録されます。
・必須フィールド:商品名/商品番号/分類/標準単価/仕入単価
・拡張ポイント:バーコード・QR コード、安全在庫数、発注点、リードタイム、取引先、ロット有効期限
入庫管理アプリは、入庫に関する情報を登録して管理できるアプリです。入庫した日付、商品名、商品の単価、入庫数などのデータが登録できます。
・必須フィールド:入庫日/商品(ルックアップ)/数量/単価
・拡張ポイント:仕入先発注番号、ロケーション、ロット番号、賞味期限
出庫管理アプリは、出庫に関する情報を管理するアプリです。入庫管理アプリと項目名は同じなので、複製して構築します。
・必須フィールド:出庫日/商品/数量/単価
・拡張ポイント:バーコード・QR コード、安全在庫数、発注点、リードタイム、取引先、ロット有効期限
在庫管理アプリでは、商品の在庫の状況を把握して管理できます。必要な項目である、棚卸日、商品マスタからのルックアップ、棚卸時の商品の数量・単価を設定します。
・必須フィールド:商品(ルックアップ)/現在庫/棚卸日
・拡張ポイント:棚卸差異、調整理由、安全在庫アラート有無
基本的には、上記の商品マスタアプリ、入庫管理アプリ、出庫管理アプリ、在庫管理アプリの4つのアプリで在庫管理システムを構築することができます。
もし追加で機能を実装したい場合には、次のようにプラグインを導入すれば実現できることがあります。
標準の4アプリ構成でも十分に運用を始められますが、「バーコードで一括入力したい」「多拠点データを夜間バッチで集計したい」など、現場ごとに求められる拡張ニーズはさまざまです。
そんな時に役立つのが、クリックだけで機能を上乗せできるkintoneプラグイン。ここでは在庫管理で導入効果の高いプラグインを5カテゴリーに分けて紹介します。
・履歴・関連情報の可視化
「関連サブテーブル一覧表示プラグイン」を使えば、商品マスタに入庫・出庫履歴が自動集約され、時系列推移をワンクリックで確認できます。担当者は品番を開くだけで過去の動きと残数を比較でき、欠品兆候や在庫過多を即座に把握。CSV 出力や並べ替えも簡単で報告書作成の手間を削減。検品担当から購買部門まで同じデータを共有でき、情報伝達ミスも防げます。
・バーコード/QR コード入力
「Barcode for kintone」を導入すると、スマホやハンディターミナルでバーコードや QR を読み取るだけで品番・ロット・数量が自動入力。紙のチェックリストや手打ちが不要となり入力ミスを大幅削減します。スキャンと同時に在庫数が更新されるため倉庫内の在庫が常に正確。ピッキング、受入検品、棚卸まで作業時間を 30〜50%短縮した事例も多数報告されています。
・Excelライクな一括編集・棚卸
「krewSheet」は kintone の一覧を Excel そっくりの操作感に変換。Ctrl+V で大量貼付け、オートフィルで連番入力、セル内計算も可能です。棚卸差異や調整数を現場で一括入力でき、従来の Excel への転記が不要に。元 Excel ユーザーでも違和感なく移行できるため定着率が高く教育コストも最小化。入力スピード向上がそのまま在庫精度アップにつながります。
・自動集計・バッチ処理
「krewData」があれば複数アプリを跨いだデータ抽出・変換・ロードを夜間バッチで自動化可能。たとえば「入庫-出庫」を計算して在庫アプリへ転記、拠点別残高を集約して全社レポートを生成、といった処理がドラッグ操作だけで完結します。人手の月次締めや VLOOKUP 連結が不要になり差異分析に集中できる環境を整備。API 連携で基幹 ERP ともシームレスに同期できます。
・高度グラフ・BI ダッシュボード
「グラフプラス」は標準機能を超える BI ダッシュボードをノーコードで生成。パレート図で ABC 分析、ヒートマップで滞留在庫を可視化、累積在庫推移で季節変動を俯瞰できます。ポータルや部門別ビューに配置すれば経営層も現場も同じ指標をリアルタイム共有。視覚的にわかりやすいため、迅速な意思決定と改善アクションを後押しし、在庫最適化を強力に支援します。
・導入のポイント
プラグイン導入は「現場課題の洗い出し→機能選定→設定・検証」の3段階で進めるとスムーズ。まず履歴可視化など重要度の高い課題から着手し、その後に入力速度や集計負荷など残る痛点を段階的に解消します。試用環境で権限設定と動作確認を行い、本番へロールアウト。多くのプラグインはインストールと簡易設定で即日運用できるため、小さく始めて順次拡張するアプローチが成功の近道です。
【関連リンク】kintoneプラグイン・javascript開発プラン
【関連リンク】kintoneのプラグイン・Javascript開発一覧から学ぶ業務の効率化
【関連リンク】kintoneのアプリにプラグインの追加や削除を行う|kintone基礎講座
kintoneで在庫管理システムを構築するメリットとして、次のことが挙げられます。
市販のパッケージ化された在庫管理システムは、中小企業にとって機能が使わない機能も出てきます。そのようなシステムを導入することで、コストに無駄が出ることがあります。一方、kintoneで在庫管理システムを構築する際には、必要な機能だけを実装することができ、必要最低限の低コストによる在庫管理システムの構築が可能です。
kintoneで在庫管理システムを構築することで、在庫数を一覧で確認できる画面を表示したり、グラフ化して閲覧することができます。このことから、在庫不足になりそうなときに早期に気づくことができます。
在庫管理アプリにおいては、リマインダーの条件通知を設定することで、在庫の適正数を下回ったタイミングで通知を受けることができます。これにより機会損失の防止につながります。
棚卸しの際に、在庫カウントして、その数値を記録する際に紙やエクセルでの管理では、転記ミスが発生することがあります。kintoneで在庫管理アプリを構築することで、入出庫数を入力すれば、在庫数は自動計算されるため、転記ミスを軽減できます。
コミュニケーション機能を実装しているため、担当者同士のやりとりが可視化されます。「スペース」というコミュニケーション機能により、担当者のやりとりがいつでも見えるようにしておけば、追跡することも可能です。
kintoneはクラウドサービスであるため、外部からもモバイル端末からデータの参照が可能です。例えば店の卸の際に、在庫をカウントする際などには、タブレット端末などを通じてその場で入力を行うこともできます。
一方でkintoneで在庫管理システムを構築するデメリットとして、次のことが挙げられます。
kintone ならドラッグ&ドロップで基本機能は形になりますが、ロット逆転防止や多段階 BOM、FIFO/LIFO 計算など高度な在庫ロジックを落とし込むには JavaScript や REST API による独自開発が不可欠です。社内に技術者がいない場合は外部ベンダーへ委託することになり、開発費・調整工数が発生。「ノーコードで速く安く」という魅力が薄れ、改修内容が属人的になってブラックボックス化するリスクも高まります。
kintone には 1 アプリ 50 万レコード、1 レコード 5MB などの上限が存在します。入出庫履歴が日々増えると数年で制限に近づき、一覧表示が重くなるケースも少なくありません。ストレージ追加や履歴アプリ分割で対応できますが、その分ライセンス費や管理コストが上昇し画面遷移も複雑化します。大規模運用を想定する企業は、初期段階でアーカイブ手順やデータ分割ルールを設計しておく必要があります。
倉庫では高速スキャン用ハンディターミナルや自動倉庫制御システムと連携するケースが一般的ですが、kintone 標準機能は Web ブラウザ経由の入力が中心です。Bluetooth スキャナ程度なら容易に接続できても、Telnet 系ハンディや RF タグ、ラベルプリンタとリアルタイム通信を行うには追加開発や中間サーバーが必要。通信遅延やオフライン時の業務停止リスクもあるため、高速スキャンを必須とする物流現場では専門 WMS との併用や専用アプリ開発を検討する必要があります。
kintoneで在庫管理システム開発
kintoneで購買・調達の業務を改善!
kintoneで在庫管理システムを構築するときには、次のような注意点があります。
在庫管理システムで、取り扱うデータ量や更新頻度が高すぎる場合、容量不足などの問題が生じることもあります。あらかじめ確認しておくことで、均等による在庫管理システムが自社に適しているかが判断できます。
モバイル端末から入力することもあるでしょう。その場合には、特に現場のユーザーが使いやすい設計にする視点も重要です。
kintoneの在庫管理システムでは、同時に複数人のユーザーがアプリに情報を入力することができません。
例えば2人のユーザーが同時に入庫情報を登録していたとします。この場合、先に登録ボタンを押したほうの情報が登録されます。情報の重複や、間違った情報の上書き等のリスクがあるため、複数人同時入力や作業がむずかしいことを理解した運用体制を構築しましょう。
在庫を一時的に確保する在庫引当や、在庫の金額を評価する在庫評価の機能も実装できます。
これらを実装するためには、複数のアプリなどをまたいだ、複雑な集計が必要であるため、多少大がかりなカスタマイズが必要になり、コストが増大する可能性もあります。必要な機能かどうかよく見極めることが重要です。
実際の課題にkintoneをどう活用すればいいのか、具体的にイメージできるよう、業種別の活用例を紹介します。
アパレル卸企業では、各担当者が個別に作成した Excel ファイルが社内に散在し、在庫状況を瞬時に把握できないことが欠品の主因となっていました。kintone 上に商品・入庫・出庫・在庫の4つのアプリを用意し、スマートフォンによるバーコード入力を標準化したことで、データはリアルタイムに一元管理されるようになりました。現場では手書きや転記作業が不要になり、営業担当も外出先から正確な在庫数を確認できるため、機会損失や緊急発注が大幅に減少しています。
医療機器商社では、全国に点在する倉庫の棚卸に多くの時間と人員を割いていました。しかもロット番号や有効期限の記録ミスが発生しやすく、医療機関からの返品要請が課題となっていました。kintone ではロケーション別・ロット別の管理項目を追加し、棚卸入力は Excel ライクに操作できるプラグインで効率化。検品から承認、在庫反映までをプロセス管理で統一した結果、棚卸期間が短縮され、期限切れ在庫の発生も抑えられました。操作履歴が自動で残るため、内部統制や監査対応も円滑になっています。
複数のオンラインモールで家電を販売する EC 事業者は、店舗ごとに在庫を手動で突き合わせていたため、在庫差異が頻発し販売機会を逃していました。kintone では API 連携を活用し、各モールと在庫データを自動同期。さらに販売履歴や在庫推移を可視化するレポートを定期配信することで、在庫調整に関する作業はほぼゼロに近づきました。在庫の動きが見える化されたことで仕入れ判断の精度が高まり、在庫回転率も向上しています。
kintoneは、在庫管理を行うのに好適であり、さまざまなメリットが得られます。もし社内で在庫管理システムを構築する際には、kintoneの特性をよくとらえた上で、構築を進めることをおすすめします。
システムクレイスでは、kintoneアプリ開発・カスタマイズを承っており、在庫管理システムにおけるカスタマイズも可能です。お困りの際にはぜひお気軽にお問い合わせください。
【関連リンク】kintoneで売上管理を効率化~kintone活用のメリットを事例を交えて解説
【関連リンク】kintoneで顧客管理するには?~アプリやシステム開発する方法もご紹介
【関連リンク】kintoneのプロセス管理でワークフローを設定するメリットと方法を解説!
kintoneアプリの開発・カスタマイズに関するご相談・ご質問などお気軽にお問い合わせください